今回は、不動産の場所を探す方法について、お話ししたいと思います。 「親から相続した山が田舎にあるんだけど、場所がよく判らないんだよね…」
不動産業や行政書士として相続案件に携わっているとよくご相談を受けます。
「親父が何年か前に境界の立会いをしたとは言っていたけど、詳しくは聞いてないんだよなぁ。もう何年も前だし、山の中だから、境界っていっても探すのは難しそうだよね…」
どの辺ですか?と話しているとこんな答え話になります。
もちろん、売買等で正確な境界を得る必要がある場合には、役場で座標を取得したり土地家屋調査士等の専門家に依頼しなければなりませんが、田舎が遠かったりすると闇雲に現地まで行っても労力ばかり使ってしまいます。そこで、おおよその場所を知るために、一般的に手に入るものを使って、できるところまで。やってみたいと思います。
※測量された年代にもよるでしょうし、使う道具も専門のものではありませんので、どうしてもずれが出てしまいます。なので参考程度と思ってください。
①グーグルマップで確認 まずは、手元の資料(売買契約書や固定資産課税明細書)から地番を特定して、グーグルマップで確認してみます。

完全に山の中のようですね…
②法務局で取得した地図を確認 次に法務局(ネットなら登記情報提供サービス)で、調べたい地番の登記事項証明書(土地)と地図を取得します。
登記事項証明書で名義人に間違いがないかを確認してから、法務局で取得した地図の下の方に記載されている「分類」の欄を確認。
「地図(法第14条第1項)」と書かれているでしょうか?「地図に準ずる図面」と書かれているでしょうか?
ここでは、「地図(法第14条第1項)」と書かれていることがポイントです☆
我々は、よく「14条地図」と呼びますが、「地籍調査」等が行われた結果に基づいて作成されますので地図の左下端と右上端に、平面直角座標が入っています。これの座標値を使って、法務局で取得した地図から場所を探してみます。
ここで、「地図に準ずる図面」と書かれている場合は、残念ながら正確さに欠けますので、場所の特定はかなり困難となります…
※法務局で取得できる地図には「地図(法第14条第1項)」と「地図に準ずる図面」というものがありますが、ほぼ正確なのは14条地図。座標が記載されています。これが「地図に準ずる図面」だと座標が判らないので、特定するのがかなり難しくなります。住宅地図や航空写真なんかと睨めっこしながら画像処理ソフトで重ね合わせたりして…頑張るのですが、これでも「地図混乱地域」だと特定することは不可能になります。
「地図(法第14条第1項)」と「地図に準ずる図面」「地図混乱地域」それぞれの用語の説明は次の通り。
・地図(法第14条第1項)
不動産登記法第14条第1項に規定される図面であり,土地の面積や距離,形状,位置について正確性が高く,境界を一定の誤差の範囲内で復元可能な図面。
・地図に準ずる図面
一般的に公図と呼ばれ,主に明治時代に租税徴収の目的で作成された図面のことで,不動産登記法第14条1項地図が備え付けられるまでの間,これに代わるものとして法務局に備え付けられている図面。「地図に準ずる図面」は,土地の面積や距離については正確性が低く,土地の配列や形状の概略を記載した図面とされる。
・地図混乱地域
地図混乱地域(ちずこんらんちいき)とは、日本の一定の地域において、不動産登記事項証明書や法務局(登記所)が備え付けている地図(公図のこと、また地図に準ずる図面を含む)に記載されている内容と、実際の土地の位置や形状が相違している地域をいう。「地図混乱」は必要に応じて公図混乱(こうずこんらん)、字図混乱(あざずこんらん)とも表記される。[Wikipediaより] ここからは、「地図(法第14条第1項)」を使用して作業していきます。
③法務局で取得した地図から地図の座標を確認する。 まず、地図から「右上と左下に書かれている座標値」と「座標系番号又は記号」を控えます。


・右上端と左下橋に書かれている座標値
右上端:X軸-82387.212 Y軸-77938.293
左下端:X軸-82639.212 Y軸-78188.293
※地図の座標値は、南北(緯度)がX軸で、北側(地図の上側)に向けて+(プラス)、東西(経度)がY軸で、東側(地図の右側)に向けて+(プラス) 。
・出力縮尺
1/1000
・座標系番号又は記号
Ⅱ
④地図から知りたい境界のポイントを抽出して平面直角座標値を求める。
赤丸のポイントを参考に調べてみます。
※登記情報提供サービスを利用した場合、地図をPDFで取得することになりますが印刷するときには実際のサイズで印刷することに注意してください。
左下端を基準にして、X軸(下辺)からの長さが「6.2㎝」。Y軸(左辺)からの長さが「2.3㎝」です。
これを、出力縮尺が1/1000ですので、1,000倍にします。
X軸 6.2㎝×1,000=62m
Y軸 2.3㎝×1,000=23m
左下端の平面直角座標値にこの値を+すると(右上端から計った場合は-します)
X軸 -82639.212+62=-82577.212
Y軸 -78188.293+23=-78165.293
このポイントの平面直角座標値は以下の通りです。
X軸 -82577.212
Y軸 -78165.293
⑤平面直角座標値を緯度経度に返還する。 グーグルマップでは、平面直角座標値を使用できないので、国土地理院の「測量計算サイト」を利用して緯度経度に変換します。

①「5 緯度、経度への換算」をクリック

②測地系:世界測地系
平面直角座標系:地図の座標系番号又は記号を参考に選択(サンプルの場合はⅡなので2系)
X座標:先程求めた座標値を入力(-82577.212)
Y座標:先程求めた座標値を入力(-78165.293)
③計算実行をクリック
④緯度・経度を控える
緯度 32°15′09.28065″
経度 130°10′13.58999″
※慣れてきたら緯度、経度への換算には一括変換を利用すると便利です
⑥グーグルマップに入力してみる。 先程の緯度・経度の数値を以下のようにしてグーグルマップの検索窓(画像の赤枠部分)に入力してみます。
「32°15′09.28065″ 130°10′13.58999″」

この結果、境界のポイントをグーグルマップに表示することができます。
複数個所の境界を調べる場合、同じ作業を繰り返してマークを保存すれば土地の範囲を地図上に表示させることができます。

↑↑こんな感じで書類をまとめて
↓↓ポイントを出します
⑦スマホを利用して現地を確認する。 スマホのアプリでグーグルマップが入っていると思います。
先程はパソコンでの操作でしたが、スマホでもほぼ同じ。緯度・経度をグーグルマップの検索窓に入力して、GPSをオンに。目的地に近づいていけばポイントと自分の現在地が重なっておおよその場所が特定できます。
他にも、スマホのアプリでは、GPS機能を使って現在地の座標を表示してくれるものもありますので、参考にしてみてください。
まとめ 今回は、「親から相続した山が田舎にあるんだけど、場所がよく判らないんだよね…」ということで、手元にあるものだけでできる場所の確認方法をまとめてみました。
役場で座標を取得してグーグルマップに落とし込めばもう少し精細な境界が判るでしょうし、売買等で正確な境界を確認する必要がある場合には土地家屋調査士等の専門家にご依頼ください。
おおよその場所の特定ですのであしからず。興味のある方は試してみてください。
ちなみに、14条地図をグーグルマップに重ね合わせてくれるサービスやサイトもあります。「公図 グーグルマップ」と検索すれば出てきますので、こちらもご参考に。
エム管理不動産
[ホームページ]
テーマ:住宅・不動産 -
ジャンル:ライフ